研究概要 |
アキラルな基質の形成する不斉結晶のキラリティーのみを不斉源として利用する反応も絶対不斉反応に属し、近年、分子間、分子内光反応を用いた成功例が報告されている。我々は、含窒素カルボニル化合物であるアミド、イミド、チオアミド、チオイミドが高い確率でキラルな空間群の結晶を与えることを見いだした。固相光反応を利用した絶対不斉合成の限界と有機合成反応への応用、キラル化の解明を目的として種々のアキラルな基質の結晶化と光反応性を検討し、以下のような絶対不斉合成反応を達成した。 チオアミドはSP^2平面構造の窒素原子を有し、アミド結合の回転に要する自由エネルギーは大きく16-25kcalである。非対称なN-ベンジル-N-イソプロピル-α,β-不飽和チオアミドは光照射により、分子内アルケンの水素引き抜き環化反応によるβ-チオラクタムを与えるが、液相ではベンジル基が、固相ではイソプロピル基が反応部位となり、β-チオラクタムが得られる。相の違いによる生成物の選択性を見いだした。 さらに、N,N-ジベンジルシクロヘキセンカルボチオアミドが不斉結晶(空間群P2_1)を形成することを見い出し、その光照射で光学活性なβ-チオラクタムが収率96%、97%eeで得られた。この反応はcrystal-to-crystalで進行し、転化率が増加しても高い不斉選択性が保持された。さらに、N-benzyl-N-isopropyl-3-methylcrotonthioamideやN,N-dibenzyl-3-methylcrotonthioamide,N-benzyl-N-methylmethacrylthioamideが不斉結晶を形成し、固相光反応により対応する光学活性な生成物の合成に成功した。
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