研究概要 |
本年度はスチルベン型化合物としてアゾベンゼン類をとりあげ,そのX線結晶解析にもとづく研究を行った.試料として用いたのは,以下の化合物である.(E)-アゾベンゼン(1),(E)-2,2'-ジメチルアゾベンゼン(2),(E)-3,3'-ジメチルアゾベンゼン(3),(E)-4,4'-ジメチルアゾベンゼン(4)である.このうち,2および4は,文献記載の方法により合成した.1と3は,東京化成工業より購入した. 上記のアゾベンゼン類1-4の結晶構造を,80Kから296Kの範囲のいくつかの温度で,X線結晶解析により決定した.測定には,自動4軸X線回折計(理学電機AFC6a型)と試料温度変化装置(Oxford Cryostream Cooler)を用いた.構造解析には,Xta13.4およびShelx193を用いた. 化合物1,3および4については,構造の乱れが見られ,乱れた分子の存在比が温度依存性を示した.これから,観測された構造の乱れは動的なものであることが分かった.この動的な構造の乱れは,N-Ph結合の内部回転によって引き起こされる配座変換に起因することが明らかになった.この配座回線は,自転車のペダル(ベンゼン環をペダルとみなす)運動のような動きによって起こっていることが結論できた.化合物2の場合に構造の乱れが観側されなかったのは,2つの配座のエネルギー差が大きすぎたためと考えられる.
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