研究概要 |
3位にカルボメトキシ基やシアノ基,アセチル基などの電子吸引基を導入した3-メチル-5,5-ジアリール-1,2-ジオキソラン及び3,3,6,6-テトラアリール-1,2-ジオキサン誘導体を合成し,その直接光分解,光増感分解,さらには熱分解について検討した。以下に示すような新規な知見を得た。 (1)3位に電子吸引基を導入した3-メチル-5,5-ジアリール-1,2-ジオキソラン誘導体の直接光分解反応では,先に報告した3,3,5-トリアリール-1,2-ジオキソランの光分解とは異なり,光照射によって生成した1,5-酸素ビラジカル中間体から5位のアリール基(アニシル基,トリル基)が移動した転位体であるケトエーテルが好収率で得られることを見い出した。3位に電子吸引基,5位に電子供与性のアリール基を導入することがアリール移動の反応効率向上の重要な因子であることを発見した。一方,3位にアセチル基を導入した1,2-ジオキソランではこのようなアリール移動は観測されず,アセチルラジカルの脱離(Norrish type I反応)による分解反応が起こることを見い出した。 (2)3,3,6,6-テトラアリール-1,2-ジオキサン誘導体の直接光分解反応では,rho-アニシル基を有する基質に限って,C-O結合開裂によって生じた1,6-ビラジカル中間体が1,5-水素移動とHock-cleavageにより1,4,4-テトラ(rho-アニシル)-3-ブテノンとrho-メトキシフェノールを生成したが,トリフェニルピリリウムパークロレートによる光増感分解(電子移動)では,この基質以外にもomicron-アニシル体やrho-トリル体でも同様なC-O結合開裂中間体が生成し,対応する分解生成物が得られることを見い出した。光電子移動の利用により,基質のカチオンラジカル中間体を経由して間接的にビラジカル中間体が発生できることを見い出した。
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