研究概要 |
芳香族置換基を有する-1,2-ジオキソラン誘導体や1,2-ジオキサン誘導体,さらには,1,2,4-トリオキソラン誘導体について,臭化鉄(II)や臭化鉄(III)との反応を検討した。以下に示す新規な知見を得た。 (1) 3,3,5,5-テトラアリール-1,2-ジオキソラン誘導体と臭化鉄(II)との反応では,FeイオンによるO-O結合の内圏的な一電子還元的開裂により,各種分解生成物と抗マラリア活性種として提案されている高原子価鉄オキソ中間体(Fe(IV)=0)が生成することを見い出すとともに,1,1,4,4-テトラアニシル-1,3-ブタジエンやヘキサメチルジュワ-ベンゼンの添加によりFe(IV)=0の生成を明らかにした。また,臭化鉄(III)との反応においても,臭化鉄(II)と同様に0-0結合の還元的開裂が起こり,Fe(IV)=0よりも酸化状態の高いFe(V)=0が発生することを見い出した。 (2) 3,3,6,6-テトラアリール-1,2-ジオキサン誘導体と臭化鉄(II)との反応では,上記(1)の場合と同様に,0-0結合の一電子還元的開裂により,各種分解生成物とFe(IV)=0が生成することを見い出した。また,臭化鉄(III)との反応においても,0-0結合の還元的開裂が起こり,Fe(V)=0が発生することを見い出した。この基質の直接光分解反応がC-0結合開裂からの機構で説明されていたことと比較すると非常に興味ある結果である。各種分解方法から得られる情報を総合することにより,より詳細な環状過酸化物の分解機構の解明が可能になると考えられる。 (3) 3,3-ジアリール-5-(2,2-ジアリール)ビニル-1,2,4.トリオキソラン(オゾニド)誘導体と臭化鉄(II)あるいは臭化鉄(III)の反応においても,収率は低下するがFe(IV)=0やFe(V)-0が発生することを見い出した。
|