研究概要 |
(1)ヒドロキシルラジカル捕捉剤としてギ酸ナトリウムまたは第三ブチルアルコールを含むチミン誘導体[チミン(1a);1-メチルチミン(1b);1,3-ジメチルチミン(1c);チミジン(1d)]のアルゴン飽和水溶液に^<60>Co-γ線を照射し、一電子還元反応を経て生成するメソ型およびラセミ型C(5)-C(5)結合ジヒドロピリミジン二量体(2a-d)を分取液体クロマトグラフを用いて単離精製した。 (2)C(5)-C(5)結合ジヒドロピリミジン二量体(2a-d)の水溶液中におけるコンフォーメーションをNMRを用いて調べ、単結晶X線構造解析データとの対応について検討した結果、1bのメソ型C(5)-C(5)結合ジヒドロピリミジン二量体(2a)は、溶液中でも結晶と同じように2つのピリミジン環が向かい合ったコンホメーションをとり易いことが明らかになった。 (3)放射線化学的手法によって水溶液中に発生させた酸化活性種および還元活性種による二量体C(5)-C(5)結合の酸化開裂および還元開裂の反応性をそれぞれ調べ、水溶液中あるいは単結晶中における各二量体のコンフォーメーションとの相関について検討した。また、C(5)-C(5)結合の開裂に及ぼすpH依存性を考慮して、2aは一電子還元過程で、2b-dは二電子還元過程で開裂する反応機構を示した。 (4)各種の立体異性C(5)-C(5)結合ジヒドロピリミジン二量体(1a-d)の一電子還元電位を、ルテニウム錯体(Ru(bpy)_3Cl_2・6H_2O)の蛍光に対する消光速度定数によって評価した。また、放射線による酸化還元開裂の反応性と生成物分布との対応について検討した結果、C(5)-C(5)結合ジヒドロピリミジン二量体の酸化還元開裂の反応効率は一電子還元電位に依存しないことを明らかにした。
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