研究概要 |
チミン誘導体[チミン(1a);1-メチルチミン(1b);1,3-ジメチルチミン(1c);チミジン(1d)]の一電子還元反応を経て生成するメソ型およびラセミ型C(5)-C(5)結合ジヒドロピリミジン二量体(2a-d)について、下記の実験を実施し、所定の成果を得た。 (1) 1-メチルチミン1bのC(5)-C(5)結合ジヒドロ二量体2bの立体異性体のうち、メソ体は370nm付近に極大をもつ蛍光スペクトルを与えたが、ラセミ体はほとんど発光しなかった。また、1,3-ジメチルチミン1cのC(5)-C(5)結合ジヒドロ二量体2cは、メソ体およびラセミ体いずれもほとんど発光しなかった。吸収スペクトル特性と併せて、2cのメソ体は基底状態および励起状態のいずれにおいても分子内水素結合により相互作用していると推測された。 (2) 定常光照射条件下における、フラビンやフラビンアデニンジヌクレオチドを用いたC(5)-C(5)結合ジヒドロピリミジン二量体2a-dの光増感酸化還元を経るC(5)-C(5)結合開裂反応の反応生成物分布を調べ、二量体構造との相関を明らかにした。 (3) 過硫酸イオン(S@@S22@@E2O@@S28@@E2@@S12-@@E1)のレーザーフォトリシス(励起波長266nm)で発生するSO@@S24@@E2@@S1-@@E1による1-メチルチミン1bのC(5)-C(5)結合ジヒドロ二量体2bの一電子酸化分解を調べ、メソ体とラセミ体のいずれからも1-メチルチミン-5-イルラジカルに帰属される400nmに極大をもつ過渡吸収スペクトルを観測した。この5-イルラジカルの減衰は二分子反応速度式に従い、その速度定数はメソ体が2.7x10@@S19@@E1M@@S1-1@@E1s@@S1-1@@E1およびラセミ体が2.2x10@@S19@@E1M@@S1-1@@E1s@@S1-1@@E1であった。 (4) 光還元剤としてN,N-ジメチルアニリンを用いたC(5)-C(5)結合ジヒドロピリミジン二量体2b-d水溶液のレーザーフォトリシスを試みたが、定常光照射下の光還元生成物から予想される5-イルラジカルの過渡吸収スペクトルは検出できなかった。
|