研究概要 |
ビス[8-(フェニルセレノ)ナフチル]-1,1'-ジセレニド(la)の4個のセレン原子が直線状に並列することをX線結晶構造解析法を用いて実証した。この中心結合をH_2Se---SeH-SeH---SeH_2をモデルとして、Gaussian 94のプログラムを用いて、6-311++G(3df、2pd)基底関数を適応し、DFT(B3LYP)レベルでAbinitio MO計算を行った。その結果、この骨格であるSe---Se-Se---Seは、両外側のSeの非共有電子対の軌道と内側のSe-Se結合(の反結合性軌道)が相互作用して構成する4c-6eとして解析できることを明確に示した。 また標題の目的を達成するための分子設計を行うためには、セレン原子間における非結合相互作用を解明する必要がある。そこで、1-(メチルセレノ)-8-(フェニルセレノ)ナフタレン(2a)を用いて、そのフェニル基のp-位に置換基Yを導入することによって、8-位のセレン原子の電子密度等を変化させた場合、その構造がどの様な影響を受けるかを詳しく検討した。その結果、2aの構造が、type C-typeC pairingであるのに対して、p-OMeおよびp-Cl体では、それぞれ、pseudo-およびpure type A-typeB pairingとなることを実証した。 さらに、1および2の置換体としてY=H,OMe,Me,Cl,Br,COOEt,NO_2を結合し、^<77>SeNMR化学シフトを測定するとともに、それらのモデルを用い、GIAO理論に基づいて^<77>SeNMR化学シフトの計算値と実測値を比較検討することによって、1における4c-6eおよび2における3c-4eや結合経由による置換基効果の伝達効果を明らかにした。
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