酵素の持つ重要な性質の一つである分子認識の様式について明らかにするために、そのモデル化合物として、水素結合部位と金属配位子を組み込んだホスト分子の合成を行った。目的化合物としては水素結合部位にソフトール基、金属配位部位にサレン型の金属配位子を組み込んだ系を設計し、まず、水素結合部位にあたる8-置換-2-ナフトール誘導体を2-ナフトールから合成した。これと_<p->ブロモフェノール誘導体とのカップリングにより得られた化合物のフェノールのオルト位へホルミル基を導入し、その後エチレンジアミン誘導体と縮合を行いシッフ塩基とした。これを酢酸ニッケルと処理することによりニッケルを配位させ目的の化合物を合成した。 この目的化合物を用いて、各種アミノ酸類との溶液中での会合の様子をプロトンNMRスペクトルを用いて調べたが、ヒスチジンメチルエステル以外は殆どシフト変化が見られなかった。そこで、ヒスチジンとの会合様式について調べるため、ヒスチジンの官能基であるイミダゾールとの会合を調べた結果、イミダゾールと相互作用していることがわかり、イミダゾール環が重要であることがあきらかとなった。 今後、アミン類の配位に対する中心金属の影響や、キラル配位子をもちいたアミン酸類のキラル認識について検討する予定である。
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