研究概要 |
生理活性セリン誘導体群をグルタミン酸を不斉源として選択的に合成する方法を開発することを目的に、(3R)-5-シロキシ-3-フェニル-1H-ピロロ[1,2-c]オキサゾール(1)の立体選択的アルキル化を検討した。まず、ピロールとしてTBSOP(N-t-butoxycarbony1-2-t-butyldimethylsiloxypyrrole)とアルデヒドとの立体選択性を検討した。TBSOPと芳香族アルデヒドとの三フッ化ホウ素存在下の反応では、threo体が優先し、四塩化スズを用いた場合では、erythro体が優先して生成した。一方TBSOPと脂肪族アルデヒドとの反応では選択性が完全に逆転することを見いだした。この反応機構を合理的に説明することができた。この遷移状態をシロキシピロール1の立体選択制にも拡張することができた。次に、1とニトロエチレンの反応を行ったところフェニル基と同じ側から反応した生成物が優位に得られた。一方、他のニトロオレフィンとの反応ではフェニル基と反対側で反応した生成物が優位であった。これらは、収率よく脱ニトロ化することができた。このアルキル化生成物をOsO_4でジヒドロキシル化したのちPb(OAc)_4で解裂してα-アルキルセリン誘導体とするごとに成功した。サーモシモシジン及びISP-I合成を行うために、グリセルアルデヒドと1の反応に置ける重複立体選択性について検討した。TiCl_4存在下(R)-2-TBSO-propionaldehydeと反応させることでサーモシモシジン合成に必要な立体を持つ化合物を55%の収率で得た。一方、ISP-I合成には、ZnCl_2存在下(S)-2-TBSO-propionaldehydeとの反応生成物が必要な立体を有しており、収率60%で得られた。この方法で、サーモシモシジンやISP-I合成に必要な不斉炭素をすべて導入できることがわかった。これらの生成物を同様の方法で、サーモシモシジンやISP-Iの基本骨格を構築することができた。
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