研究概要 |
有機合成化学における還元反応は、酸化反応と共に、重要な反応である。特に遊離基還元は官能基選択性やその手軽さから多方面で利用されている。この様な反応では、様々な理由からヒドロシランが使用されているが、その反応性はあまり高くない。昨年に引き続いて、反応性を高める因子、即ち、ケイ素遊離基の安定化因子の解明を目的に研究を行った。 昨年度からの継続研究で、種々の新規ヒドロシランを創製し、その反応性を試した。現在までに得られた結果では、9,10-位にケイ素原子を含むアントラセン誘導体(1)が最も良い還元剤であることが示された。我々は、この活性化因子を新たな渡環(p-d)π相互作用であると提案したが、別の研究グループから立体障害による安定化であるとの提案もあった。そこで、本年度は、種々の置換基を持つ1の合成を行い、それらを用いた光化学的に発生させたシリルラジカルの安定性を異性化を目安として測定した。その結果、立体因子は安定化因子とは考えにくく、渡環(p-d)π相互作用が考えられる最も有力な因子であると推測された。現在は、この考え方に基づいた還元剤設計を行い、新規ヒドロシランの合成を行っている。その他、本年度はこの研究に関係する周辺の化学的考察も行った。
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