熱帯地方に生息するある種の白蟻には、自分達の集団を外敵から守るために、兵隊蟻が油状の化学防御物質を代謝することが知られている。この物質の中には、トリネルビタンおよびケンパンに代表される特異なIN-OUT骨格を有するジテルペンが含まれていることがPrestwichの研究によって明らかにされている。 本研究は未だその合成がなされていないこれらの全合成および合成品による殺虫活性を調査することを目的として行っている。 トリネルビタン類は、生合成的にはセンブレンの類縁体と考えることができる。我々はセンブレンの大量合成ルートの開発と二環性のセコトリネルビタン、三環性のトリネルビタンの全合成を目的とした反応を行った。その結果既にセンブレン骨格の好収率合成、さらに生合成類似の反応による二環性中間体の構築および立体選択的な5員環形成による三環性のトリネルビタンの合成ルートを開発した。さらに、三環性のトリネルビタンの12位の二重結合の選択的な還元反応についても成功している。引き続き合成研究を行い、三環性のトリネルビタンから四環性のケンパン骨格のー段階変換反応を開発した。 本年の研究は、最終天然物の全合成に向けた研究を行い、同一骨格を有する化合物について詳細なユニット反応を検討し、いくつかの有益な知見を得ることができた。
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