研究概要 |
1. 熱安定性に優れたジオキセタン骨格の創出:ジオキセタン環の熱安定性を支配する立体的な因子としてジオキセタン環上の置換基同士の立体反発と環のネジレがあるとの考えの基にして、熱安定ジオキセタン、5-t-ブチル-4,4-ジメチル-2-オキサビシクロ[3.2.0]ヘプタン類の合成に成功した。これをさらに発展させ、1,3-steric effectもジオキセタンの安定化に寄与することを見い出した。この結果、室温での半減期が100年以上を有するジオキセタンの創出に成功した。また、旧来の考えでは不安定とされていた6員環性ジオキセタンにおいても、geminal置換基同士の立体反発を利用することにより、極めて熱安定性に優れたジオキセタンの創出が可能であることを明らかにした。 2. 新奇トリガリングシステムの検討:フェノール性置換基を有するジオキセタンの塩基誘発分解発光はフェノキシドアニオンからのペルオキシ結合への電荷移動によりひき起こされると考えられ、電子供与体となる芳香環の電子的因子が分解の速度を支配する因子となる。この他、芳香環とジオキセタン環の立体的関係が発光の速度に大きく関わっていることを明らかにした。また、新奇なトリガリングシステムの開発を目指し、アミノフェニル基を有するジオキセタン類の合成を行った。その結果、メタ-アミノフェニル置換ジオキセタンはフェノール性類縁体と同様に熱的に安定であり、かつ塩基処理により発光することを見い出した。 3. 蛍光性発色団の設計:様々な置換様式のシロキシナフタレン環を有するジオキセタン類の合成に引き続き、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、さらにベンゾチアゾール環を有するジオキセタンを合成しそれらの塩基誘発発光の特性について検討した。これらのジオキセタンのうち、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン誘導体からは赤色発光が、ベンゾチアゾール誘導体からは深紅の発光が見られた。
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