研究概要 |
1.N,N,N',N',N"-pen tamethyldiethylenetriamine(略称pmdt)と種々のα-アミノ酸を含む混合配位子銅(II)錯体を合成した.そのうちL-バリン(L-val)およびα-アミノイソ絡酸(aiba)を含む錯体[Cu(pmdt)(L-val)]ClO_4,[Cu(Pmdt)(aiba)]ClO_4の単結晶X線解析を行った.その結果,これらは,trigonal factor(τ)の値として81,94%を示し,ほぼ正三角両錐型であることがわかった.吸収およびESRスペクトルは,その他のα-アミノ酸を含む錯体も三角両錐型に近いことを示していた.(J.Inorg.Biochem.,67,70(1997);Inorg.Chim.Acta,in press) 2.pmdtとピコリン酸(pic)を含む錯体を単離できたが,元素分析およびX線結晶解析の結果から,2核錯体と単核錯体が混じった[Cu_2(pic)(H_2O)(pmdt)_2][Cu(pic)(pmdt)](ClO_4)_4であることがわかった.構造的に独立な銅(II)イオンが3種あり,そのうち2個がpicイオンのカルボキシル基で架橋している.これら3種の銅(II)イオンはすべて5配位で、それぞれ歪んだ四角錐型構造であった.一方,Cu(II):pmdt:pic=1:1:1の水溶液中においては,三元錯体[Cu(pic)(pmdt)]^+がpH8〜9で80%以上の存在割合をもっていることがわかった.(第47回錯体化学討論会(1997),錯1PA79) 3.2,2'-ジピコリルアミン(dpa)と種々のアミノ酸を含む混合配位子銅(II)錯体の合成を試みたが,単離されたのは,フェニルアラニンやN-フェニルグリシンのような置換基に芳香環を有しているアミノ酸を含む錯体だけであった.水溶液中においても,このようなアミノ酸を含む系でのみ,三元錯体[Cu(am)(dpa)]^<2+>の存在割合が高かった.今後これらの理由を検討していく. 今後,pmdtおよびdpaの両方の性質を併せもつ3座配位子を用いて,種々の2座配位子を含む5配位型混合配位子銅(II)錯体を合成する.単結晶が得られればX線構造解析を行なう一方,スペクトルその他の性質を調べていく.また,これらの三元錯体系の水溶液中における安定度を決定する.
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