研究概要 |
1. いくつかの三座配位子(トリアミン)とアミノ酸およびジアミンなどの2座配位子からなる銅(II)5配位錯体を合成し,単結晶X線構造解析や各種スペクトル測定により構造や電子状態を調べるとともに,pH滴定法などにより水溶液中の安定度を明らかにした. 2. N,N,N′,N″,N″-ペンタメチルジエチレントリアミン(pmdt)とL-バリン(L-val)およびα-アミノイソ絡酸(aiba)を含む[Cu(pmdt)(L-val)]ClO_4および[Cu(pmdt)(aiba)]ClO_4は,trigonal factor(τ)の値として,それぞれ81と94%を示し,エチレンジアミンを含む[Cu(pmdt)(en)](ClO_4)_2と同様にほぼ正三角両錐型であった.一方,2,2-ジピコリルアミン(dpa)とL-フェニルアラニン(L-phe)からなる[Cu(dpa)(L-phe)]ClO_4は,やや歪んだ四角錐型であった.また,dpaのピリジン環とL-pheのベンゼン環の間で分子内スタッキングは見られなかったが,分子間スタッキングが存在していた. pmdtとdpaの配位基を併せもつ新規トリアミンN,N-ジメチル-N′-(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン(pyen)とアミノ酸からなる銅(II)三元錯体も四角錐型のスペクトルを示した.dpaとジアミンを含む5配位錯体で,固体状態と溶液状態とで異なるスペクトルを示すものがあった. 3. dpaおよびpyenの3座配位子とアミノ酸からなる5配位銅(II)錯体の水溶液中における安定度は,L-トリプトファンやL-チロシンのような芳香族アミノ酸を含む系で大きくなり,混合配位子5配位錯体の存在割合が高かった.このことから,水溶液中では,dpaおよびpyenのピリジン環とアミノ酸配位子の置換芳香環との間に何らかの疎水的相互作用が働いていると推定された.
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