近年の生物無機科学分野の飛躍的発展により、生体高分子との複合体としての金属イオン(錯体)の重要性・多様性が次々と明らかになってきた。このような背景の中、金属とタンパク質複合体に関する化学的研究として、種々のペプチド立体構造を構築し(デノボ設計)、金属イオンや金属錯体を補因子とするタンパク質を創製する試みが萌芽してきた。そこで、本研究ではデノボ設計手法を駆使し、水溶液中において安定に金属イオンあるいは金属錯体を補足でき、しかも立体構造を安定化させることのできるポリペプチドを合成した。さらに、錯体構造も含めた金属-ペプチド複合体の水溶液中における立体構造と金属(錯体)機能との関連性を詳細に研究することを目的とする。平成9年度は、1)両親媒性ペプチド2次構造構築原理を展開し、金属イオンと錯体化可能な長鎖ペプチドの設計と合成に成功した。2)金属イオンや金属ポルフィリンとペプチドとの複合化およびペプチド立体構造形成に関する研究を行い、金属イオン(亜鉛・銅イオン)や鉄-ポルフィリンとの錯体形成により、ペプチド立体構造が安定化する機構を発見した。
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