研究概要 |
カラムナー液晶性のビス[1,2-ビス(3,4-ジ-n-アルコキシフェニル)エタンジオンジオキシマート]d^8金属(II)錯体の合成に成功した。これらの液晶が示すサーモクロミズムは、中心金属が周辺の長鎖によって締め付けられることによって引き起こされる。長鎖のファンデルワースル相互作用を視覚化できることを発見した。これらの(C_nO)_8-M鎖体の長鎖による「見かけの圧力」を、対応する無置換金属鎖体における、圧力に対するd-pバンドのシフト率より算出することが出来た。この金属-金属間が加熱により上下に伸びるのかそれとも横滑りすることにより伸びるのか不明であった。そこで、ニッケル金属鎖体液晶をX線吸収端構造(XANES)スペクトルを解析することにより決定した。DV-Xα計算を用いて解析したところ、鎖体の構造が高温で分子面が横に滑ることにより変化しているということが初めてわかった。 次に、この系の鎖体において、カラムナー液晶からラメラ液晶へ変化する限界分子構造を研究した。中心コア錯体の周辺長鎖の本数を8本から4本に減らすと、その液晶相はカラムナーCol_<hd>から新規な円盤状ラメラD_<L.rec>(P2_12_1)へその構造を変えることがわかった。 また興味深いことに、これらの錯体は過飽和のn-ヘキサン溶液中でゲル化する。このゲルの構造を決定するためにX線回析用に特別なセルを開発した。このゲルは二次元のヘキサゴナル構造を持ち、これはリオトロピック液晶の逆ヘキサゴナル相と類似していることがわかった。 現在までに合成した円盤状のビス(グリオキシマート)d^8金属(II)錯体を高分子化することにより、圧力や温度により色調の変化する機能材料を開発することができる。そこで、合成経路を種々検討し、重合性基を有するビス(グリオキシマート)Ni(II)錯体合成に成功した。今後、大量合成ができるよう検討していく予定である。
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