研究概要 |
1. 三核クラスター錯体[Cp_3Co_3(μ_3-CPh)_2]とAgO_2CCF_3やAgNO_3などの銀塩との反応を行い1つのコバルト-コバルト原子間に銀が架橋した構造の錯体[Cp_3Co_3(μ_3-CPh)_2{μ-Ag(X)}](X=O_2CCF_3,NO_3)を得た.銀が架橋したコバルト-コバルト間距離は他と比べてわずかに長くなっていた.この錯体の塩化メチレンおよびアセトニトリル中でのNMR,ESRを測定したところ,塩化メチレン中では銀解離平衡が,アセトニトリル中ではカチオンラジカル[Cp_3Co_3(μ_3-CPh)_2]^+の生成を含む平衡があることが明らかになった. 2. [Cp_3Co_3(μ_3-CPh)_2]とハロゲンとの反応を行い1つのコバルト-コバルト原子間にハロゲンが架橋した構造の錯体[Cp_3Co_3(μ_3-CPh)_2(μ-X)]^+(X=Cl,Br,I)を得た.この錯体のハロゲン原子は3つのコバルト原子と同一平面上にあり,ハロゲンが架橋したコバルト原子間は他のコバルト原子間よりもかなり長くなっていた.この錯体のサイクリックボルタンメトリー(CV)測走を行ったところ還元により中性の[Cp_3Co_3(μ_3-CPh)_2]が再生することが明らかになった.また,中性錯体に過剰のCl^-を加えた条件でのCV測定を行ったところ,[Cp_3Co_3(μ_3-CPh)_2(μ-Cl)]^+が生成することがわかった.その機構は、まず中性錯体の1電子酸化により[Cp_3Co_3(μ_3-CPh)_2]^+が生成し,これとCl^-が反応したものが速やかに酸化されて[Cp_3Co_3(μ_3-CPh)_2(μ-Cl)]^+となるというものであることが明らかとなった.
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