N-メチルプロトポルフィリン(NMN)はフェロケラターゼ(Fc)の強い阻害剤として知られている。NMMをハフテンとして得られたモノクローナル抗体が金属化反応の触媒活性を有することから、NMMはFCの遷移状態アナログ(TSA)として認識されている。最近、NMMをTSAとしたDNA配列のin vitroセレクションから、NMMに親和性を有する配列が見出され、それらの金属化反応の活性が研究されている^<2)>。我々は、一本鎖DNAオリゴマーのFc類似活性と塩基配列およびそれらの二次構造の相関性に興味を持ち、ポルフィリンの金属化反応の詳細についてNMR、CDおよびHPLC法によって検討している。最も触媒活性が高いとされるst1配列(33量体)とNMMの相互作用についてNMR測定から核酸の2次構造と触媒活性の関連について知見が得られた。 カリウムイオンの共存下で記録されたstl配列のNMRスペクトル(310K)には11ppm近傍に検出されたGのイミノプロトンが特徴的である。この信号は340Kまでの温度上昇に連動して信号強度は可逆的に減少した。さらに、ナトリウムイオン共存下ではイミノプロトンの信号強度が著しく減少したことから、Stl配列は4重鎮構造を取ることが判明した。次に、NMMを当量および10倍量加えたNMRスペクトルを比較した。当量のNMMを添加するとG-4重鎮に由来するイミノプロトンが約2ppm高磁場シフトした。これは、NMMがG-イミノプロトンに環電流効果を及ぼしたことを意味している。さらに、10倍量加えるとNMMのメソ位水素が約1ppm高磁場シフトして9ppm近房に検出され、4重鎖構造からポルフィリンへの環電流効果も確認された。現段階でNMMの結合位置を特定することは出来ないが、少なくともNMMはG-4重鎖部分にインターカレーションすることが明らかにされた。この4重鎖構造の疎水環境がポルフィリンの金属化反応の反応中心である可能性が高いことが推察される。
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