研究概要 |
ポルフィリンのダイマーは多電子酸化還元系の構造ユニットとして注目され、近年、多くの誘導体が報告されている。ポルフィリンの周辺部置換基を利用して、2つのポルフィリンを共有結合で連結する有機化学的な合成法や、2つの金属ポルフィリンの金属-金属間を連結する錯体科学的な合成法により、これらのポルフィリンダイマーが多数合成されてきた。2つのポルフィリンの面間距離や配向などの構造要素は多電子酸化還元機能に重大な影響を与えると考えられるので、従来にない新規な連結形態を持つポルフィリンダイマーの開発は多くの研究者が注目している。本研究者は、コバルトポルフィリンとアセチレンの反応を用いて、2つのポルフィリンのピロール窒素を2つの炭素で連結するという独自の有機金属化学的な手法を開発したが、本研究ではこのCH=CH-N,N′-連結構造を持つポルフィリンダイマーについて、以下に述べるような錯体科学的な研究を展開した。 (1)CH=CH-N,N′-連結構造を持つビスポルフィリンのCo単核錯体、Co-Co,Cu-Cu,Zn-Zn,Co-Zn,Co-Cu複核錯体の合成を行った。Co-Zn複核錯体のX線結晶構造解析を行い、2つのポルフィリンの面間距離が4.39Åであることを明らかにした。更に、Co-Cu複核錯体のNMRスペクトルの解析を行い、Coの電子スピンによって、銅の電子スピンの緩和が促進されていることを見出した。 (2)異なったポルフィリンからなる混合ビスポルフィリン、トリスポルフィリン、テトラキスポルフィリンを合成した。 (3)新規なCH=C-N,N^<21′>,N^<22′>-連結構造、CH-CH-N^<21>,N^<22>,N^<21′>,N^<22′>-連結構造を持つビスポルフィリンを合成し、その構造を明らかにした。
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