研究概要 |
多電子酸化還元系の構造ユニットとして有用な積層分子系の合成法を確立する事を目的に、新規な積層ポルフィリンの合成を行った。2種類のポルフィリン分子を組み合わせたビスポルフィリンは異なる金属イオンを挿入することが可能であり、多様な構造を構築することができる。平成9年度ではオクタエチルポルフィリン(OEP)とテトラフェニルポルフィリン(TPP)のピロール窒素同士をビニレン基で連結したビスポルフィリンを用いて、Co-Cu、Co-Zn錯体の合成を行った。平成10年度では、この混合ビスポルフィリンフリーベースに塩化第一鉄を反応させるとOEP側のみに鉄(II)が挿入された単核錯体が収率よく得られる事を明らかにした。この鉄錯体からFe-Zn、Fe-Co錯体を高収率で得ることができるが、これらの鉄錯体は過塩素酸銀で鉄(III)に酸化した後、水を加える事によって2分子の鉄錯体をミューオキソ2鉄構造で連結することができる。この合成法により、2H-Fe-Fe--2H,Zn-Fe-Fe-Zn、Co-Fe-Fe-Co等の新規なポルフィリン4層構造を有する多核錯体を簡便に得ることができた。一方、混合ビスポルフィリンのコバルト単核錯体を酸化することにより、CH=C-N,N^<21>',N^<22>'-連結構造を持つポルフィリンを得ることができた。このビスポルフィリンではOEP部がN^<21>',N^<22>'-架橋構造を持つために、TPP部のみに金属の挿入を行うことが可能である。しかしながらN^<21>',N^<22>'-架橋OEP部は酸化還元活性であって、-一0.72Vと-1.15Vに可逆的な酸化還元波を与えた。従って、このビスポルフィリンは多電子還元系として有用である事がわかった。 以上のように、多様な連結様式を持つ積層ポルフィリンの合成を行うことができた
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