研究概要 |
本研究は、α-ジイミン配位子を含む一連の白金(II)錯体を用いて、様々な分子間相互作用が複合的に作用する系を構築して構造化学的研究を行い、分子認識の本質を追及することを目的としている。本年度は、配位子及び錯体の設計と合成、単結晶X線構造解析、および種々の分光学的測定により以下の成果を得た。1.ジピリドフェナジン白金(II)錯体の二次元スタッキング:DNAに対する有用なインターカレータ配位子として注目されているジピリド[3,2-a:2′3′-c]フェナジン(dppz)を用いて新規白金-ジイミン錯体、[PtCl_2(dppz)]および[Pt(CN)_2(dppz)]を合成し、X線構造解析により三次元構造を決定した。その結果、これらのdppz錯体は白金-白金相互作用と配位子のππ相互作用の両方で構築された新しい型の二次元的なスタッキングを形成することが見いだされた。2.(エチレンジアミン)(ジイミン)白金錯体によるフリージイミン類の認識と複合スタック形成:平面四配位型のジイミン白金錯体に非平面型のエチレンジアミンを配位させると、面外方向へのかさ高さの為、白金直鎖構造を含むスタッキングが不利になる。このような錯体がフリーのフェナントロリンを選択的に取り込んで交互に積層した1:1複合スタック結晶を生成することを見い出した。さらに、様々なπ電子系を持つジイミン類を用いて複合スタック形成能を調べ、分子間相互作用と分子認識について検討中である。3.(ジシアノ)(ジイミン)白金(II)錯体の積層構造と発光挙動:この種の錯体は結晶状態で白金鎖を持ち、白金間の電子的な相互作用に基づく特有の赤いMLCT発光を示す。ジイミン配位子として3,3′-ビイソキノリンを含む系では白金間相互作用と配位子間のππ相互作用の両方により、発光スペクトルの劇的な温度変化や結晶系の変化が見いだされた。引き続き、詳細を検討する。
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