研究概要 |
炭化水素類の中でも反応性の乏しいアルカン類へ官能基を導入することは工業的に大変重要であると共に、石油の代替資源として注目されている天然ガスの有効利用にもつながる。メタンモノオキシゲナーゼ(MMO)に代表される非ヘム系酸化酵素は、温和な条件でメタンを酸素化できることで知られている。近年、ルテニウムを含む錯体が非ヘム系酸素化酵素のモデル錯体として注目されている。そこで、新しいルテニウム錯体触媒の開発を行い、アルカン類への官能基の導入を検討した。 MMOの活性中心にある鉄イオンへはイミダゾールなどの含窒素複素環およびカルボキシル基が配位している。三座配位子と二座配位子を有する混合配位型ルテニウム錯体は、様々な構造と官能基を持つ錯体を比較的容易に合成できる。そこで、アミノ基、ピリジル基、カルボキシル基など多様な官能基を有する混合配位型ルテニウム錯体11種を合成し、そのアルカン酸化反応における触媒能を検討した。その結果、クロロ(N,N-ジメチルグリシナト)ターピリジンルテニウム錯体を触媒としアダマンタンを基質とした場合、1-アダマンタノールが最高66%得られ、これら錯体はアルカンの酸素化反応のルテニウム錯体触媒としては、これまでにない高活性な触媒であることがわかった。一方、エチルベンゼンを基質にすると、フェニルエチルアルコールが最高62%(α体48%、β体14%)得られた。
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