2個の環状配位子を官能基でつなぎ、ウレアーゼの活性部位に出来る限り近い構造を持つ二環状配位子-複核ニッケル錯体が得られるように、下記の(1)および(2)の合成を行った。 (1)まず、2環をclosed型に固定するためにσ-キシリレン基で架橋した二環状配位子-複核ニッケル錯体を合成した。この錯体はテンプレート反応を利用する従来の方法では合成できなかったので、新たな合成法を開発した。まず、3個の二級アミンの内2個だけをベンジル化した環状配位子を2個、フタロイル基を用いて架橋した後、ベンジル基をはずし、さらにアミド結合を還元して目的のσ-キシリレン基で架橋した二環状配位子を得た。この配位子を用いて複核ニッケル錯体を合成に成功した。錯体の同定は、マス、およびIRスペクトル測定、元素分析、CVの測定などにより行った。合成途中に得られた各種の二環状配位子についても複核ニッケルを合成し、σ-キシリレン基で架橋した錯体とその性質や構造を比較した。これらの結果は1998年3月に開かれる日本化学会春季年会にて発表する。 (2)次に、水酸基を持つ2-ヒドロキシプロピル基で2環を架橋した二環状配位子およびその複核ニッケル錯体の合成に成功した。この錯体の過塩素酸塩では、二環はclosed型を取っており、水酸基は2個のニッケルイオンを架橋している。ニッケル間距離は約3.8Åとウレアーゼのそれ(3.5Å)に近い。また、一方のニッケルイオンは5配位状態で、他方のニッケルイオンは6配位状態を取っている。すなわち、この非対称型二環状配位子-複核ニッケル錯体の構造は、ウレアーゼの活性中心の配位構造に大変類似している。現在、X線構造解析を進めるとともに発表論文を準備中である。
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