研究概要 |
前年度に引き続き、二環状配位子およびその関連化合物で、ウレアーゼの活性部位に出来る限り近い構造を持つ複核ニッケル錯体が得られるように、下記の(1)および(2)の合成を行った。 (1) まず、金属イオンに配位可能な水酸基を持つ2-ヒドロキシプロピル基で2環を架橋した二環状配位子およびその複核ニッケル錯体の合成と構造解析を進めた。複核ニッケル錯体のアジ化物を合成しその構造を単結晶X線構造解析することに成功した。このアジ化物では、二環はclosed型を取っており、水酸基は2個のニッケルイオンをアルコキソ架橋している。ニッル間距離は約3.9Åである。ニッケルイオンは六配位型をとっている。また、この結晶中では、アジ化物イオンは2座配位子として働いており、closed型になっている二環状配位子-複核ニッケル錯体(1ユニット)が交互に連結されてチェイン構造を作っていることが明らかになった。さらに、この錯体の過塩素酸塩の磁性測定から、2個のニッケルイオンの間には反強磁性的相互作用が存在することも明らかになった。ウレアーゼの活性中心の1つのモデル錯体が得られた。 (2) 次に、上記の二環状配位子を合成する際の原料である水酸基を持つヘキサアミンN,N,N',N'-tetrakis(3-aminopropyl)-1,3-diaminopropan-2-olの複核ニッケル錯体を合成した。単結晶X線構造解析から、この錯体は(1)で得られた複核ニッケル錯体よりもさらにウレアーゼ活性部位の構造に似ていることが明らかになった。すなわち、2個のニッケルイオンはアルコキソ架橋されると同時にアセタト架橋されている。この二重架橋ため、ニッケル間距離は約3.5Åと上記(1)の錯体よりも更にウレアーゼ活性中心のニッケル間距離に近い。また、どちらのニッケルイオンも、五配位型をとっているが配位構造は異なっている。よりウレアーゼに近いモデルが得られた。
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