研究概要 |
本研究では複合配位子として1)ブレオマイシン(Blm)およびデグリコペプロマイシン(dpe),2)アクリジン-ポリアミン,3)ヒスチジンを含んだポリペプチド,4)ビオロゲン-ポルフィリンなどの複合配位子を用いて,これらの金属錯体の DNA に対する結合構造や反応性を検討した。 1)Fe(II)Blm はDNA上で2種類の異なった配向で結合し ON-Fe(II)Blm では NOが強く立体的に束縛されて運動性が著しく抑制されていることを明らかにした。また糖鎖を含まないdpeの低スピン Fe(III) 錯体は不安定で不可逆学的に高スピン錯体に変化すること, Cu(II)dpe では立体特異的な結合が出来ない事などを明らかにした。 2)数種のアクリジン-ポリアミンの白金錯体については細胞毒性を調べシルプラチン以上の活性を明らかにすると共に,分子力場計算により錯体の結合構造を検討した。また銅(II)錯体については DNAファイバーESR 分光法により銅(II)配位部位が室温付近で激しく運動ししていることを示した。 3)まず L-ヒスチジン銅(II)錯体が DNA 上で他のアミノ酸では見られない擬集体を形成する事を明らかにした。つぎにX_<aa>-GIY-His (X_<aa>=Giy, Lys, Arg)の銅(II)錯体はB-型 DNA のマイナーグループ内に一定の配向で結合することを示し、Ni(III)錯体による塩基配列特異的な DNA 切断反応との関連を明らかにした。 4)ビオロゲン側鎖が4つ結合したポルフィリン銅(II)錯体は DNA と強く結合し DNA 二重螺旋を架橋すること,側鎖が1つのときは錯体が不安定化し,DNA 上ではポルフィリン環由来の化合物と銅(II)イオンが錯形成して結合していることが示された。 以上の結果は研究成果報告書に示したように,学会誌論文として,あるいは国際及び国内のシンポジウムにおいて発表された。
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