本研究では、高分子ゲルのメゾスコピックサイズの表面構造とその刺激応答性を測定し、ゲルの合成時に形成されるドメイン構造と、外的環境変化による表面構造の変化を観測・解析することによって、巨視的な機能に及ぼすドメイン構造の影響を明らかにする。そのために、高分子網目の性質の異なる様々なゲルを合成し、微視的・巨視的手段を用い、表面構造の階層性について研究する。サブミクロンサイズの表面構造が巨視的な機能発現に果たす役割について考察し、高分子の持つ複雑構造とそれが果たすユニークな機能への役割を解明することを目的とした。平成9年度はゲルの微視的な表面構造について実験を行ない、次の成果を得た。 1.高分子ゲルの合成:N-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)ゲルをさまざまな環境下で合成した。合成温度を変化させることにより、網目の不均一性を変化させた。ゲルの形状はディスク状で、シランカップリング剤を用いて、片面をガラス板に化学的に固定して合成した。 2.微視的な表面構造の評価:(1)原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、液中タッピングモードにて、NIPAゲル表面のサブミクロン〜数10ナノメートルサイズの微視的な表面構造を液中で直接観察した。(2)AFMに付属の液中セルを、改良・自作し、これを用いて、外部環境の変化に伴う微視的な構造変化を測定した。温度変化によるNIPAゲルの表面形態の変化を測定した。紫外可視分光光度計を購入し、これを用いて溶媒成分を定量した。(3)AFMによって得られたゲルの表面像の自己相関関数を決定し、これを用いて相関長を計算し、スケーリング、パワースペクトルなどによるラフネス解析を行ない、ゲルの表面構造とその変化を考察した。ゲルの表面が実際にどのような微視的構造をとっているのかについて解析した。
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