研究概要 |
高密度光記録のターゲットは4元系半導体レーザー(GaInPAl:635nm)を用いたシステムである事はほぼ確実視されている。この系は780nmのものに比べ約1.5倍の記録密度を持ち,“書き込み可能"なDVDとしてもその期待は大きい。本研究では固体状態で635nm近傍に光学吸収をもつ有機色素を探索あるいは合成し、その光学吸収を分子間の相互作用によりスイッチングする事を目的とした。有機色素として、ペリレン顔料とこれ迄に余り手掛けられていない非ベンゼン系化合物(8,8-ジシアノヘプタフルベンの誘導体)を取り上げた。黒色ペリレン顔料の中に非晶質状態で鮮やかな赤を呈し、結晶状態で黒色(635nmの光吸収の出現)に変化する物質を見つけた。本化合物は光ディスク材料として極めて有望であり、結晶構造を基礎に電子構造の全貌を明らかにした。また、光ディスクを試作しの実装テストも行った。その結果、黒色ペリレンを記録材料としたディスクは実用に十分な特性を示す事が示された。また、非ベンゼン系8,8-ジシアノヘプタフルベン化合物に付いてはかなりの数の新規化合物を合成した。この中には結晶状態で635nmの吸収極大を有し、非晶質状態で消失するものが見つかった(8,8-ジシアノ-3-(4′-ジメチルアミノ)-フェニルヘプタフルベン)。本物質も光ディスクに応用できる可能性が示唆されたが、非常に結晶化し易い事が判明し、ディスクへの応用は断念せざるを得なかった。しかし、本結晶が中心対称を有しない事から非線型光学特性が確認され、非線型光学材料として有望であることが明らかになった。
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