研究概要 |
本研究では、二分子のテトラチアフルバレン(TTF)が融合したBDT-TTPの新規誘導体を合成し、それらを用いた分子性錯体の構造と物性を解明することにより、二次元有機分子性金属および有機超伝導体の設計指針を確立することを目的としている。本年度得られた成果は以下のとおりである。 (1) 二分子のジセレナジチアフルバレンをユニットとして含む融合型ドナー、ST-TTPの新規誘導体の合成に成功し,それらを用いたカチオンラジカル塩の作製を行った。それらのうち、多くの塩のX線構造解析に成功し、(TMEO-ST-TTP)@@S22@@E2X(X=ClO@@S24@@E2,PF@@S26@@E2,AsF@@S26@@E2,TaF@@S26@@E2),(CPTM-TS-TTP)@@S22@@E2TCNQはβ型,(EOET-TS-TTP)[Au(CN)@@S22@@E2]@@S2036@@E2'(CHET-TS-TTP)(SbF@@S26@@E2)@@S2038@@E2はκ型と呼ばれるドナー分子配列をとることが明かとなった。上記の塩の大部分は4.2Kまで金属的な伝導性を示した。 (2) チオピランあるいはピラン環を含む融合型ドナー、TM-TPDS,TM-PDSの合成に成功し,これらが四面体および八面体アニオンと擬三次元的なドナー分子配列を有するカチオンラジカル塩を形成することを見いだした。 (3) シクロヘキセン環が挿入された新規拡張型TTPドナー,CHDTDTの合成に成功し,その電気化学的性質を明らかにした。これまでに得られた大部分のCHDTDT塩は低温まで金属的であることを見出した。 上記の結果をまとめた論文については一部を除き投稿済みである。
|