研究概要 |
1.本研究では構造相転移に対するランダムネスの効果を熱力学的に明らかにするために不純物を混入した試料の高精度熱容量測定を予定している.測定対象として選択したジフルオロタ-フェニル(DFTP)は市販されておらず,極微量の試料について実験を行う必要があるので実験方法の検討を行った. (1)高精度測温ブリッジを購入し試料容器の小型化のための予備実験を行った.現状の1/10程度までの小型化は比較的容易であるが,それ以上の小型化には軽量で熱容量が小さい断熱壁を備えた試料容器を使用する必要があることが明らかになった.現在,このための準備を進めている. (2)断熱法に代わる別の方法としてAC法の適用可能性も検討した.既設のAC法による熱量計を改良し,DFTPを含む関連化合物について実験を行った.数mKに一点という高い温度分解能と0.1%以下の測定精度を達成し,装置的には最高水準に達することができた.本研究で比較対照としている無置換タ-フェニル(TP)についてこれまでに知られていなかった熱異常を見いだし,今秋,学会発表の予定である.不純物を混入したDFPTについては,試料の作成法を確立し測定に取りかかる予定である. 2.変位型構造相転移で見いだした特異な不純物効果の微視的起源を明らかにするために,分子動力学シミュレーションを行った.局所的な秩序変数(平衡位置からの変位)の空間分布をシミュレートし,実験で見いだされたとおりに不純物の種類によって影響が異なる可能性を確認した.
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