研究概要 |
14族元素の低酸状態であるSn(II),Pb(III)のハロ錯体はおもに中心金属のp軌道を用い6個の配位子と弱い共有結合形成する。このハイパーバレント結合を含む固体では,その結合の特性を反映した興味ある現象や物性を示す。その典型的な例がペロブスカイト構造のCsSnX_3(X=Br,I)であり,これらは金属光沢をもった電子伝導性結晶である。そこで,カチオンのイオン半径を変化させた一連のASnBr_3を合成し,粉末X線回析,元差熱分析,^<119>Sn NMR,^<81>Br NQRの測定から電子伝導性と構造の関係について考案した。セシウム塩やメチルアンモニウム塩では室温で立方晶ペロブスカイト構造をとり,特に格子の小さいセシウム塩では10^2Scm^<-1>程度の金属的な伝導性を示す。しかし,立方晶の格子がCs塩に比べ1.6%膨張したメチルアンモニウム塩では半導体的な伝導性を示した。カチオンのイオン半径が更に増大すると電子伝導性はほとんど観測されず,その構造は歪んだペロブスカイト構造となり,孤立したピラミッド型のSnBr_3^-アニオンの存在が認められた。このことは^<119>Sn NMRの化学シフトの異方性や^<81>Br NQRの共鳴周波数に反映されていた。金属的なセシウム塩では^<119>Sn NMRのスペクトルと緩和時間に,金属特有の傾向が観測できた。また,同時に金属的でありながら,欠陥サイトを介した臭化物イオンの伝導性が^<119>Sn NMRの緩和時間から示唆された。
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