研究概要 |
ポリシランは主鎖上に存在するσ共役ドメイン間のホッピングにより正孔移動を行うため、主鎖が規則正しく配向することにより2桁程度移動度が速くなると言われている。この研究では強磁界を利用したポリシラン主鎖の配向を試み以下の結果を得た。 1)0〜12テスラの磁界下で、ポリシラン溶液の紫外吸収の吸光度変化を調べた。ポリシランの紫外吸収はσ共役ドメインが原因となっており、その異方性のため光の進行方向が主鎖に対して垂直の時吸光度が一番大きくなる。このことを利用して、いくつかのポリシラン(poly(methylphenylsilane),poly(methylbiphenylsilane),poly(methyl4,7,10,13-tetraoxatetradecylsilane))の主鎖が磁場に垂直の方向に並ぶことを見出した。 2)5テスラ、12テスラの磁界下でポリシラン感光体を作製し、タイム・オブ・フライト法により正孔移動度を測定した。移動度の温度依存性、電界依存性をホッピングサイトがエネルギー的および位置的ガウス分布しているモデル(Disorder formalism)により解析を行った。エネルギー的揺らぎを示すパラメータ(σ)は、90.2meV(0テスラ)、85.7meV(5テスラ)、82.6meV(12テスラ)また、位置的揺らぎを示すパラメータ(Σ)は、2.54(0テスラ)、2.01(5テスラ)、1.84(12テスラ)といずれも系統的に変化した。これらは、ポリシラン主鎖が磁界に垂直に配列しているモデルにより説明することが出来る。 以上、紫外吸収の吸光度および正孔移動度により、ポリシラン主鎖が磁界に垂直に配列することを初めて見出した。
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