研究概要 |
ポリシランは主鎖上に存在するσ共役ドメイン間のホッピングにより正孔移動を行うため、主鎖が規則正しく配向することにより2桁程度移動度が速くなると言われてる。前年度の研究では、ポリシランの紫外吸収の異方性(光の進行方向が主鎖に対して垂直のとき吸光度が一番大きくなる)を利用して、0〜12テスラの磁界下で、poly(methyl-phenylsilane),poly(methylbiphenylsilane),poly(methyl-4,7,10,13-tetraoxatetradecyl-silane)の主鎖が磁場に垂直に並ぶことを初めて見出した。 引き続き本年度は、以下の10種類のポリシランについて、0〜5テスラの磁界下で主鎖の動きを観察したが、動きが見られたのは最後に示した(10)のポリシランのみであった。(1)poly(diethyl-co-methylpropylsilane),(2)poly(cyclohexylmethylsillane),(3)poly(di-n-pentyl-silane),(4)poly(di-n-hexylsilane),(5)poly(didecylsilane),(6)poly(didodecylsilane),(7)poly(octylphenylsilane),(8)poly-(cyclohexylmethyl-co-methylphenylsilane),(9)poly(methyl-phenoxypropylsilane),(10)poly(6,9,12,15-tetraoxahexadecylmethylsilane) (1)〜(6)はalkyl基のみを含むポリシランで磁界下での動きは見られなかった。(7)〜(9)はphenyl基を含むポリシランで5テスラでは動きは見えないが、poly(methylphenylsilane)で示されたように、5〜12テスラで動く可能性はあり、今後の課題としたい。(10)は長いエーテル性極性置換基を持ち、磁界下で、主鎖が動くことが観察された。 以上の結果から、磁界による主鎖の動きは、シリコン主鎖に特有のものではなく、磁場異方性を持つ置換基の動きにより誘発されると考えられる。
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