研究概要 |
ポリシランは主鎖上に存在するσ共役ドメイン間のホッピングにより正孔移動を行うため、主鎖が規則正しく配向することにより2桁程度移動度が速くなると言われている。過去2年間の研究では、ポリシランの紫外吸収の異方性(光の進行方向が主鎖に対して垂直のとき吸光度が一番大きくなる)および正孔輸送特性(Disorder Formalismを用いて解析した)を利用して、0〜12テスラの磁界下で、(1)Poly(methyl phenyl-silane),(2)poly(methylbiphenylsilane),(3)poly(methyl-4,7,10,13-tetraoxatetra-decylsilane),(4)poly-(6,9,12,15-tetraoxahexadecylmethylsilane)の主鎖が磁場に垂直に並ぶことを初めて見出した。 引き続き本年度は、SQUID(超伝導量子干渉素子)を用いてポリシランの磁化率の測定を行い、強磁場下での主鎖の動きの定量化を試みた。 (1)と(3)のポリシランについてのシリレン1ユニット当りのSQUID測定値は、それぞれ,-5.21x10^<-5>emu、-8.6x10^<-5>emuであった。このことは、(3)は5テスラで主鎖の動きが観測されるのに比べ,(1)は12テスラで始めて応答するという実験結果と一致する。また、パスカルの加成則を用いて計算した磁化率は、(1)、(3)それぞれについて、-8.0x10^<-5>emu、-17x10^<-5>emuであった。SQUIDによる実測値は計算値より明らかに絶対値が小さい,つまり反磁性が小さくなっている。この計算値との大きなズレは、ポリシラン主鎖上のσ電子共役の実験的証拠の1つと考えられる。
|