固体の励起状態がイオン化する現象は光電子放出、光伝導などの初期過程とも関係している。この研究では吸収スペクトル、発光スペクトル、励起子の関係する電子放出などをとおして光伝導の初期過程を研究した。 われわれは高感度吸収測定装置をすでに開発しているが、今回、機械的な安定性の向上と明るい分光システムの採用によって10^<-5>の分解能で吸光度が測定できるようにした。この装置を用いてフタロシアニンそのほかの薄膜の吸収スペクトルの電場変調吸収スペクトルを測定した。試料室をSF_6でパ-ジすることによって高電場による試料表面での放電を有効に抑えることに成功し、室温で質のよいデータを得つつある。 また、ガリウムフタロシアニンの薄膜で蛍光が電場変調をうけることを見い出したので、光、電場、温度などの影響をしらべた結果、これは励起状態に対するクエンチャーが膜中にできるためと結論した。低温ではこの不可逆な現象は消失する。 コロネン、ペリレンでは励起子の関係する電子放出を測定、解析し、高い励起状態のイオン化のメカニズムに関する知見を得た。
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