縦軸感度(縦軸分解能)にすぐれた吸収測定装置を開発した。開発した装置は光学濃度にして10^<-5>の分解能をもち、本研究を通して吸収強度の微弱な変化を精度よく検出するという目的にきわめて有効であることを実証することができた。また、この装置は単分子膜の吸収スペクトル、あるいは希薄溶液の吸収スペクトルなど、光学濃度のきわめて小さい試料の測定にも威力を発揮しつつある。 この装置を使ってx型-H_2フタロシアニン(x-H_2Pc)、クロロガリウムフタロシアニン(ClGaPc)の電場変調吸収を観測、解析した。また、ClGaPcについては、蛍光の電場変調を観測し、解析した。購入したデジタルオシロスコープはノイズの多い、微弱な蛍光の時間特性を積算、平均して測定するために威力を発揮した。電場による蛍光の変調は電極から注入された電荷によるCT状態の解離が原因であると考えられること、また、この物質の励起子-電荷相互作用定数γ_<SD>は非常に大きな値をもつことがわかった。これも最低励起一重項状態が電荷移動状態の性格をもっていることと関連すると解釈される。 この研究を通して、フタロシアニン分子間のCT状態が電荷の発生、光吸収の変調、蛍光の変調に重要な意味をもつことをあきらかにすることができた。
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