研究概要 |
構造規則性を有する新規光触媒材料を探索したところ,タンタル系複合酸化物(K_3Ta_3Si_2O_<13>)が,助触媒の担持無しに,それのみで純水から水素と酸素を2:1で生成できる光触媒であることを初めて見出した。また,この化合物は紫外光励起により発光を示した。この化合物は,TaO_6が一次元状につながった柱状酸化物と見なすことができる。さらに,ゼオライトに見られるような三次元的な細孔構造が拡がっている。このように,本研究で見い出されたK_3Ta_3Si_2O_<13>は今までにない新しいタイプの光触媒および発光材料である。一方,Ga_2O_3とIn_2O_3の固溶体酸化物の光触媒活性を測定したところ,犠牲試薬存在下で水から水素も酸素も生成できることがわかった。さらに,光物性および光電気化学測定により,固溶体のバンドギャップや伝導帯の位置が,Ga_2O_3とIn_2O_3の間で自由に変化できることを明らかにしてきた。すなわち,酸化物光触媒において,組成を自由に変化させることができる固溶体を用いることにより,バンド構造(ここではバンドギャップと伝導帯レベル)を連続的に変化させることができ,それにより発光特性,光電気化学特性,光触媒活性が変化することを明らかにしてきた。さらに,新規可視光応答性光触媒材料を探索した結果,ビスマス系複合酸化物が硝酸銀水溶液からの酸素生成反応に活性を示すことを初めて見出した。いままでに可視照射下で効率よく水溶液から酸素を効率よく生成できる触媒としてはWO_3のみであった。WO_3のバンドギャップは2.8eVであるのに対して,このビスマス系複合酸化物のそれは2.3eVであることから,可視光をより有効に利用できるところに特徴がある。
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