研究概要 |
酸性リン脂質として炭素数14のジミリストィールフォスファチジルグリセロール(Na-DMPG)を用い,脱水試料DMPGに逐次,水分を加えることで水分率の異なる(0〜99g%)約40種の試料を調製し,各々の試料の示差走査熱量測定(DSC)を行うことで,ゲル-液晶相転移現象を観測した。さらに,氷融解DSC曲線を測定し,層間水量を見積った。また,^<23>Na-NMR測定を行い,層間に取り込まれた^<23>Naカチオンの結合様式を検討し,ネガティブ染色電子顕微鏡測定から構造的情報を得ることで,一重膜形成への移行過程を検討した。得られた結果を要約すると;(1)水分量の増大に伴って,ゲル-液晶相転移ピークの幅広化が生じ,これに伴って,DMPGベシクルの2分子膜層数の減少し,ベシクルサイズの減少が観測された。(2)(1)の変化は,水分率70g%までは著しく,これ以上の高含水量では徐々の変化が見られた。この現象に分えて^<23>NaのNMRのスペクトルの半値幅は,水分率70g%までは急激に減少した。さらに,2分子膜層間に取り込まれる水分子はこの水分率まで増大しつづけ,これ以の高含水率においても,さらに増大しつづけた。すなわち,無限の層間水を取り込むことが,水分率の増大に伴う多重膜から,二重膜形成をもたらす駆動力であると考えられる。
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