研究概要 |
酸性リン脂質として炭化水素鎖長C=16のdipalmitoylphosphatidylglycerol(DPPG)を用い,これの脱水試料に微量の水を逐次加えることで水分率の異なる(W_<H2O>;0〜99.8g%)計50種の「DPPG-水」系を作製した。これら試料の水分量均一性を確認した後に,-70℃からの昇温示差走査熱量測定(DSC)を行い,氷融解DSC曲線コンピューターを用いた多重ガウシアン分割法によって成分分割し,各々成分のエンタルピー量(LH)を求めた。これらのΔHをNw(=〔H_2O〕/〔DPPG〕)に対してプロットすることで,不凍結層間水,凍結層間水およびバルク自由水の計3種の水分子各々の数を見積った。その結果,2分子膜多重層構造を形成する中性リン脂質(PC,PEetc)とは異なり凍結層間水量は試料の水分率増大に伴って増加することを明らかにした。この無限に層間水量を増やすという特性が,酸性リン脂質PGの一重膜形成特性を導くことを明らかにした。さらに,高分解溶液用nmr測定をNa^<23>を対象として行ったが,水分率の増大に伴い吸収ピークの巾値巾が小さくなる現象が観測された。また,スピン-スピン緩和時間測定を行い,sharp成分とbroad成分の2種のNaの存在が明らかにされ,これは層間に取り込まれたNaカオチンが電気拡散二重層を形成して,負に帯電した2分子膜表面の電位をシャヘイしていることを明らかにした。
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