研究概要 |
有機金属アート型錯体の反応はアルキル化以外に例えば求電子剤に対するアート錯体という電子過剰・系による還元反応も期待できる.この過程を遷移金属の酸化・還元的性質を活かした"還元的な直接メタル化反応“として捉えた研究を行い,マンガンおよびクロムアート錯体が還元反応のみを起こし,新たな有機金属反応剤を生成することが明らかとなった.例えばマンガンの有機アート錯体"Bu_3MnLi"がα一位に脱離基を有するカルボニル化合物を還元し,ケトン,エステルやアミドのエノラートが効率よく生成することを見つけた.本反応を利用して,脂肪族非対称ケトンの完全な位置選択的モノアルキル化に成功した.また,アリルブロミドおよびプロパルギルブロミドに対して"Bu_4MnLi_2"が還元剤として有効に作用し,それぞれアリルおよびプロパルギルマンガン反応剤が生成する.ヨードメチルスルフィドどBu_3MnLi"の反応ではチオメチルマンガン反応剤が生成する.生成するチオメチルマンガン反応剤は種々の添加剤によりその反応性を変えることができる.また,リン酸アリルエステルを1当量のクロムアート錯体"BU_5CrLi_2"が還元し,対応するアリルクロム反応剤を与えることが明らかになった.また,有機クロアート錯体とα一位に脱離基を有するケトンおよびエステルとの反応を行ったところ,ケトンやエステルのエノラートが効率良く生成することを見つけた.これらのクロム反応剤は種々の求電子剤と効率的に反応し,対応する生成物を与えた. この様に有機遷移金属アート錯体が既知のアルキル化反応剤として働くだけではなく,多くの基質の還元剤として作用する反応もかなり一般性の高い反応であることが明らかになった.今後これらの反応は多様な有機金属反応剤の直接生成法として有機合成に有効に利用できるものと思われる.
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