本研究は分子レベルで構造規制された界面における物性の評価を目的としている。本年度はおもに水晶振動子マイクロバランスを用いた表面質量滴定法を用いて自己組織化単分子層の酸塩基特性評価を行うとともに、物性評価のキープロセスである荷電表面種(酸塩基平衡で生成)と溶液中のイオン会合について検討した。アミノアルキルチオール単分子層の表面質量滴定では、pHとともに質量が減少した。質量変化量のアニオン依存性などから、酸側でプロトネーションしているアミノ基に会合しているアニオンがpHの増加とともに脱離することに由来するものと結論した。pKaはバルクの値より2-5pKaユニット小さく、鎖長に強く依存した。単分子層生成の初期や単分子層を酸性やアルカリ性溶液から調製した場合には質量の増加や増減両方の挙動が観測された。これは単分子層中で配向が逆転し酸性のチオール基が溶液側に向いている分子の存在を示し、表面質量滴定法による界面物性評価が構造に関する知見も与えることがわかった。メルカプトアルキルカルボン酸単分子層についてはこれまで詳細に検討してきたが、本年度は2価カチオン溶液中での評価を行った。単一単分子層や混合単分子における表面カルボン酸濃度依存性から、低濃度では表面カルボン酸と2価カチオンが1:1会合、高濃度では2:1会合すると結論された。1価カチオン溶液中ではメルカプトアルキルカルボン酸やアルカンチオール単分子層の還元脱離に伴う質量減少を種々の条件下(チオールの鎖長、電解質の種類や濃度、溶媒)で測定し、カチオンは溶媒和して会合していること、界面での溶媒和数はバルクの値より小さいことなどイオン会合についての詳細な知見を得た。
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