キレート形成を原理とする水中の微量金属の前濃縮定量用吸着剤として、アミノプロピル化したシリカゲルの表面にキサンツレン酸をフェニルアゾ基を介して結合させたものを合成した。この吸着剤は、8-キノリノール結合型シリカゲルに比べ、約2倍の吸着容量(約50μmol/g)を持ち、多くの遷移金属イオンの前濃縮分離剤として優れた性能を持つことがわかった。pHを4〜〓の範囲に調節することによって、海水または河川水中の微量のCu、Ni、Cd、Co、Pb、V、Znなどを主成分である、Na、K、Ca、Mgなどから分離濃縮できた。富山湾の日本海固有水、能登半島の沿岸海水、富山市内の河川水などといった環境水試料の微量金属の前濃縮(100倍)に吸着剤を応用し、ICP-AESまたはGFAASによって測定したところ、Cu、Ni、Vなどは、μg/LレベルさらにCdは、数十ng/Lレベルといった濃度で存在することが明らかになった。また、水中のヒ素をヒモリブデン酸イオンとした後、テトラフェニルホスホニウムイオンとの会合体としてメンブランフィルター(MF)に捕集し、これを水酸化テトラメチルアンモニウム溶液に溶解し、GFAAS定量することによってμg/Lレベルのヒ素の定量ができた。さらに、錯体の生成とイオン会合をその測定原理とした、排水中のポリエチレンオキシド型の非イオン界面活性剤の迅速かつ高感度なイオン対抽出吸光光度定量法を開発した。 一方、色彩色差計を使用する迅速な簡易分析法の開発の検討も行った。μg/LレベルのFe(II)、シアン化物イオン、オルトリン酸イオン等を有色化合物に変換した後、対イオンを加えてイオン会合体としてMF上に集め、ポータブル型の色彩色差計で、L^*a^*b^*表色系におけるその色相、明度、彩度を直接測定した。これらの数値から計算した色差と濃度との間にやや湾曲した検量線が成り立つ。この方法は簡便・迅速かつ高感度であり、現場分析に利用できる。しかも有機溶媒を必要としない利点がある。
|