(1)キレート形成を原理とする水中の微量金属の前濃縮定量用吸着剤として、アミノプロピル化したシリカゲルの表面にキサンツレン酸をフェニルアゾ基を介して結合させたものを合成した。この吸着剤は、従来のものに比べ、吸着容量(約50μmol/g)が大きく、多くの遷移金属イオンの前濃縮分離剤として優れた性能を持つことがわかった。海水または河川水中の微量重金属を主成分である、Na、K、Ca、Mgなどから分離濃縮できた。富山湾の日本海固有水、能登半島の沿岸海水、富山市内の河川水などといった環境水試料の微量金属の前濃縮(100倍)に吸着剤を応用し、良好な結果を得た。(2)水中のヒ素をヒモリブデン酸イオンとした後、テトラフェニルホスホニウムイオンとの会合体としてメンブランフィルター(MF)に補集し、これを水酸化テトラメチルアンモニウム溶液に溶解し、GFAAS定量することによってμg/Lレベルのヒ素の定量ができた。MFを酸や有機溶媒でなく、アルカリ溶液で溶解することができた。(3)錯体の生成とイオン会合をその測定原理とした、排水中のポリエチレンオキシド型の非イオン界面活性剤の迅速かつ高感度なイオン対抽出吸光光度定量法を開発した。すなわち、K^+イオン存在下において、非イオン界面活性剤を錯陽イオンとし、対イオンのテトラブロモフェノールフタレインエチルエステル(TBPE)陰イオンとのイオン会合体としてトルエンに抽出し、その吸光度を測定する。(4)色彩色差計を使用する迅速な簡易分析法の開発の検討も行った。Fe^<2+>、CN^-、PO^<3->_4等を有色化合物に変換した後、対イオンとのイオン会合体としてMF上に集め、ポータブル型の色彩色差計でL^*a^*b^*表色系におけるその色相、明度、彩度を測定した。これらの数値から計算した色差ΔE^*abと濃度との間にやや湾曲した検量線が成り立つ。この方法は簡便・迅速かつ高感度・高精度であり、現場分析に利用できることが明らかになった。しかも有機溶媒を使用しない利点がある。
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