研究概要 |
今年度は、トリス型コバルト(III)アミノ酸錯体をホスト化合物とする、液体クロマトグラフ(LC)用充填剤やイオノフォアの開発に関して検討を進めると共に、これらの錯体について基礎的な知見を得るために、トリス型コバルト(III)およびクロム(III)アミノ酸錯体の立体選択的合成ならびに溶液内異性化反応についても検討を行った。昨年度から取り扱っているグリシンおよびグルタミン酸を含む各種混合アミノ酸コバルト(III)錯体、[Co(gly),(glu-H)_<3-1>]については、合成時の立体選択性を上げるために、従来の合成法を改良すると共に、カラムクロマトグラフにより分取された各種錯体を対象とし、アニオン交換型充填剤を用いたLC分析法によって、それぞれの純度を定量的に把握することが可能となった。しかしながら、LC用充填剤表面への脱水縮合反応を利用した化学修飾ならびにイオノフォアの開発に関しては、あまり進展が見られなかった。そこで、縮合反応より簡便な修飾法として、水はもちろん、他の非水溶媒への溶解度が非常に小さいfac-Λ-コバルト(III)アミノ酸錯体について、アミノ基修飾型LC用充填剤への吸着を試み、錯体を保持したカラムを調製することが可能になった。このカラムの分離特性については現在も引き続き検討中である。一方、クロム(III)アミノ酸錯体の溶液内反応については、これまでほとんど検討されていなかった水溶性のアミノ酸錯体(例えば、セリンやトレオニン)に関しても、その合成法ならびにLC分析の条件を明らかにし、水溶液中での挙動について定量的検討が可能となってきた。また、bis型錯体の配位溶媒分子の置換反応についても、本来置換不活性なクロム(III)錯体が配位子置換を起こしやすい理由の解明を目指し、従来より研究されているEDTA錯体の例とも対応させながら、チオシアン酸イオンなどとの溶液内および熱固体反応を基に検討を開始し、興味ある知見を得ることができた。
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