本研究は、液体クロマトグラフにおいて内径の小さいミクロカラムの特性を十分に発揮できる小型かつ高性能の一体型ポ-タブル装置の開発と実用化を目的とする。 本年度は重量約8.5Kgの試作機について、評価と改良を行った。装置の小型化のために小型水銀放電管による254nmおよび280nmの輝線を利用した単波長の検出器による一般的な芳香族化合物の検出の性能を評価した。さらに広範囲の対象化合物の検出法として、例えば不飽和結合等を有する化合物にはより短波長側の吸収の測定が要求されることから、新たに亜鉛放電管を採用することにより214nmの輝線を利用し、波長選択の可能な紫外吸収計を完成し、本装置の性能を、安定性、検出感度の点から評価した。この結果0.05AUFSのレンジで、ベースラインはよく安定して254nmで安息香酸エステルを、214nmでは硝酸を標品とすると、検出下限は数ナノグラムであった。この結果より本装置は実用域に達したといえる。 クロマトグラフィーにおいてカラムの性能は最も重要な問題とひとつである。従来より、カラムの調製には密度均衡法と圧力勾配法を組み合わせた精密な充填法が必要とされる、このためには有害な含ハロゲン溶媒と特殊な大流量の充填機が用いられている。我々は、小径カラムの充填には大流量のポンプは不要であることにより精密な制御のできる小型ポンプを用い、溶離液として通常用いられるアセトニトリル-水混合溶媒に充填剤を分散し、40- 50MPaの定圧で充填することで良好なカラムが調整できることをみいだした。 次に、本装置は移動実験室として野外においても運転できることを目的とするので、溶離液および廃液が万一の事故により装置外へ拡散しても環境を汚染することがないように、通常用いられる有害なアセトニトリルに代わり比較的安全性の高いエタノールを用いてビタミン、合成甘味料あるいは食品保存料等の分析に優れた溶離液系を改良した。
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