本研究は、ミクロカラムを用いる液体クロマトグラフィーにおいてカラムの特性を十分に発揮できるポータブル装置の開発と実用化及び基礎研究への応用を目的とする。 重量約8.5Kgのポータブル装置について評価と改良を行った。検出には、水銀放電管による254及び280nmと共により汎用性のある高感度検出法として亜鉛放電管による214nmの輝線の利用を可能とした。この装置では、0.05AUFSレンジで安定したベースラインが得られ、安息香酸エステルに対して検出下限は、数ナノグラムであった。放電管は1年間の使用に耐え十分な実用性を示した。新たに開発したポンプにより高圧勾配(グラディエント)溶出を可能とした。溶媒の混合に特別のミキサーやダンパーを必要としない平滑な送液が可能である。記録計を除く総重量は、約11kgであり、移動が簡単であり、現場における分析がより精密に行える。勾配溶出は分離効率と分析時間の短縮に効果的である。例として、内径1.0mmカラムで還元リゾチームをキモトリプシンで処理して得たペプチド、あるいはデキストリンの部分酸水解物のオリゴ糖の2PMP(1フェニル-2-メチル-5-ピラゾロン)誘導体について、本装置が従来型の装置と4.6mm径カラムに勝るとも劣らない分離能を有することを示した。溶質の保持機構の解明に2ポンプシステムとミクロカラムとを用いて、亜硝酸が逆相分配カラム上、酸性アルコール溶離液で特異的に保持される機構を検討した結果、溶液中で亜硝酸とエステルの間の平衡が成立し、疎水性のエステルが保持されることが分かった。カラム内での平衡式を導き、それぞれの平衡定数をクロマトグラフィーの結果から推定する方法を見出した。2PMP誘導体を用い、糖の転移酵素や加水分解酵素の生成物の分析による速度論的解析を行った。さらに2PMP誘導体の保持挙動に糖の2位および3位の水酸基の立体配置が重要であることをコンピューター解析により示した。
|