ゾーン電気泳動法は、通常は、迅速で、簡便な手段として利用されているが、ここでは、物質の溶存状態や相互作用の研究に適用した。泳動子として、ホウ素化合物であるオルト硼酸やパラボロノフェニルアラニン(p-BPA)を用いた。また、支持溶液にはエチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、グリコン酸、フルクトース、マニトール、イノシトール、グルキュロン酸、trans-アコチニン酸、トリメシン酸、イソクエン酸等を使用した。支持体には、主として純セルロース紙を用いたが、アセチルセルロース紙やリン酸紙でも実験した。スリ-スポット法で、定電位勾配下、定温度で、一定時間泳動させ、その泳動挙動から相互作用を調べた。純粋のEGやPG中では電流が流れないので、種々の割合で0.1 M NaCl水溶液と混合した支持溶液中で泳動実験を行なった。ジオール類中での泳動では、アニオン性の泳動が観測されなかったので、sp^3型の錯体は形成されていないと考えられる。ただし、sp^2型の錯体形成についてはさらなる検討が必要である。上記の有機カルボン酸中(アコチニン酸、トリメシン酸、イソクエン酸)でも泳動実験を行なったが、イソクエン酸中でのみ、アニオン性の挙動が観測された。この錯体は、先に見出したシュウ酸やクエン酸との錯体と似た錯体と考えている。ジヒドロボリル基と、ジオール基やカルボキシル基との反応に及ぼす化学構造や支持体のpH値との関係のさらなる詳細な検討を計画している。
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