研究概要 |
電導性ポリマーは様々な分野で応用が期待されてきた機能性材料であるが,実際には加工性の問題から実用化はそれほど進んでいない.この問題を解決するために,ポリマーの可溶化が研究されてきた.この可溶化(コロイド化)は分析・分離化学においても重要な応用の可能性を含んでおり,本年度の研究はこの可溶化ポリマーの機能性分離剤およびマイクロカプセルとしての機能を評価した. 1)インテリジェントイオン交換体としての機能評価 電導性ポリマーは還元されることにより内部にある陰イオン(ドーパント)を放出できる.しかし,この放出は完全ではなかったので,高分子スルフォン酸を固定ドーパントとするコロイドを合成して,その還元放出特性を検討した.この固定ドーパントからなるコロイドでは交換容量の減少がみられたが,その放出は定量的であった. 2)分子認識機能の検討 電導性ポリマーコロイドは陰イオン交換体として作用するために,機能性分子をドーパントとして合成時に加えると,その分子の持つ機能性がそのまま,きわめて簡便に組み込める.ここでは,生化学,食品,医薬工業などの分野で重要なアミノ酸の光学異性体認識機能をコロイドに組み込んだ.陰イオン性キラル配位子をドープしたコロイドを合成し,アミノ酸のコロイド内への抽出を検討した.その結果,グルタミン酸のD体はL体に比べて5倍以上多くコロイド内へ抽出されることが分かった.さらに他の数種のアミノ酸についても検討したところ,このような光学異性体抽出の選択制は陰イオン性アミノ酸で高いことが分かった.
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