研究概要 |
花の器官形成を決定する分子機構は、双子葉植物であるシロイヌナズナやキンギョソウを用いて盛んに研究されており、その結果、過去10年の間に飛躍的に理解が進んだ。われわれは、イネ科植物が独自の花形態を進化させた分子機構の解明をめざしている。本研究においてはシロイヌナズナで明らかになったABCモデルがどの程度までイネ科植物に適応できるかを調べる。これにより、イネ科植物に独特の花器官と双子葉植物の花器官との対応関係が明らかになるものと期待される。 今年度は、in situハイブリダイゼーション法によりクラスA,B,C遺伝子のイネホモログであるRAPIA、OsMADS4、RAGの発現パターンを解析した。シロイヌナズナでは、クラスA、B、C遺伝子は、それぞれがくと花弁、花弁と雄ずい、雄ずいと雌ずいで発現する。解析の結果、RAPIAは内穎、外穎、鱗皮で、OsMADS4は鱗皮と雄ずい、RAGは雄ずいと雌ずいで発現するということが明らかになった。この結果から「イネ科植物の鱗皮は双子葉植物の花弁の相同器官である」という、従来の形態学的解析により示されていた説を分子レベルで裏付けることができた。ただし、内穎、外穎の解釈に関してはさらに形質転換植物を用いた解析が必要であると考えられる。
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