研究概要 |
キイロショウジョウバエのX染色体に位置するdivers(dvr.1-28.1,8D8-9)の比較的強い対立遺伝子の表現型は、暗色の短い翅をもち体長も短くなる。他のX染色体の突然変異であるyellow、scute、forkedとの二重突然変異体はまた異なった翅の表現型を示し、これらの遺伝子と相互作用を示す特異な遺伝子であることが知られている。特にyellow突然変異と組み合わせると翅が反る。我々の大規模なP因子による挿入突然変異誘発実験により新規に3系統のdiversのP因子挿入突然変異を得て、これらの系統を元に遺伝学的、分子生物学的に解析した結果、以下のような点が明らかになった。P因子を再転移させて得た、divers遺伝子のnull変異は致死となる。GFPマーカーを持つようなX染色体のバランサー染色体(FM7i)を使って観察した結果、致死のステージは胚の段階である。また興味深いことに、あるY染色体(恐らくrDNA領域が増幅している)をもつ系統と致死でない、diversの機能を探る上で重要な手がかりになる。また、今までノーザンブロット法により転写産物が検出されていないこと、および大規模なcDNAライブラリーのスクリーニングによって未だにクローンが得られていないことからdvr遺伝子の転写レベルは非常に低いと考えられる。その転写ユニットは今のところ同定できていないが、P因子挿入部位近傍の約8kbの塩基配列を決定して、blastx検索を行った結果高い確率ですでにクローン化された遺伝子とヒットした。今後この領域をもとにRACEや、作製し直した初期胚cDNAライブラリを用いて転写産物を解析する。
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