研究概要 |
哺乳動物のゲノムがGC含量のMbレベルの区分構造よりなり、この巨大区分構造が染色体バンド領域と関係することを報告してきた。バンド領域はS期内の複製時期にも関係しており、遺伝子密度や組換え頻度等を異にしている。構造上のみならず、機能上のドメインとして理解されるようになってきた。複製タイミングのスイッチ点やGC含量のモザイク境界については、塩基配列レベルで特定できる可能性が高く、境界を特徴づけるシグナル群が存在する可能性も考えられる。この視点に立って、ヒトMHC領域とその周辺、ならびにX染色体のX不活化中心の周辺を解析した。高精度分染法において、複合バンドゾーンよりなり、バンド境界の解析に適した領域である。MHCクラスIIとIIIの境界にGC含量の変移点を見いだしていたが、複製タイミングの転換点と一致することが明らかになり、バンド境界の要件を満たすことが判明し、特徴構造が特定できた(Tenzen et al.,1997)。一般性を検証する目的で、クラスIからテロメア側の非MHC領域について、染色体歩行を行い、GC含量分布の測定を行った。非MHC領域が顕著にATに富むことが判明し、FISH法により、GC含量境界が6p21.3とp22.1の境界に対応することが示され、複製タイミングの転換点とも一致していた。X不活化中心その近傍のXq13.1-q13.3領域についても、複製タイミングの転換部位が、GC含量の変換点と一致することが判明した。両方の転換部位には、大型のポリプリン/ポリピリミジン配列が存在しており、複製の休止や減速機構に関係している可能性が考えられる。他の特徴配列の探索も行った(Sugaya et al.,1997)。
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